映画『ペコロスの母に会いに行く』を観に行って思ったこと

 社会福祉の勉強をした人は、必ず習うと思うのだけれど、アメリカのバイスティックという人が定義した相談援助技術の基本、対人援助職の行動規範である「バイスティックの7原則」というあまりにも有名な大原則があります。
この映画を観ながら、ひとつひとつの原則が次々と頭をめぐりました。
学問として習った7原則を通して、実際に現場で援助者、介護者である自分がクライエントである認知症高齢者やそのファミリーとどのように接するべきなのか、などをいろいろ考えました。

 若いころに帰っていく高齢者、一番輝いていた時の思い出に帰るわけではないけれど、そこに出てくる人々は、その高齢者にとって、生きているうちに関係性を考えなければならない人であったり、そのひとたちとかなえられなかったことを妄想の中ででもかなえたり、要するに、このまま死ぬわけにはいかないさまざまなことが、高齢者の妄想をはじめとする周辺症状にあらわれるのではないかと。
 また、さまざまな事情で高齢者福祉施設認知症の親を預ける家族についても、もっと気を掛けることがあるのではないかという思いがめぐりました。

もうひとつのキーワードとしては、「市井の人々のアーカイブス」ということ。
その人なりの一生のできごとを次世代に繋ぐつなぎ手としての介護者について、もっとまじめに取り組むべきだなと感じました。
 民俗学に関わる人、図書館司書、歴史学に詳しい人などの関わりが求められるだろうなと思っています。
 また、いま、認知症高齢者が何度も何度も繰り返し話す第二次世界大戦の話、家族の話、育った環境・・・・。あまりにも個人的な情報だから、突っ込んで聞いたり、ゆっくり時間をとって聴いたりということに心を砕いてこなかったのだけれど、傾聴することによりカウンセリングに近いことができるのではないのかな?ということも思っています。
 このまま、黙ってお墓まで持って行く話もあるでしょう。けれども、話すことで癒しを得る、ご自分を肯定する、これでよかったのだと納得される、そういうことの積み重ねが必要なのかもしれないと。これらについてはもう少し深く考えなければならないとは思いますが、正直な感想はこんな感じ。
   
 赤木春恵さん、好演されてましたが、初の主演ということもあってか周りがとても気を遣われてることがよくわかります。特に、どんなに認知が進んだシーンでもしっかりメイクしてるところなんかそういうとこですね。
 でも、逆にどうして高齢者はメイクしないんだろ。もしかしたら、ばっちりお化粧したいと思っていらっしゃるかもしれないし。あらゆることで今の自分の介護を見直すきっかけになりそうです。

 いろいろ書きましたが、基本的に明るい映画です。

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